【女装小説】くすんだ青い金曜日|第6話「タグを切る日」

女装小説

この小説について

『くすんだ青の金曜日』は、女性物の服に惹かれた32歳の会社員・中野和也が、誰にも知られない部屋で少しずつ女装を始めていく全13話の小説です。

小説を気軽な入口にしながら、作中に登場する悩みに関連したガイド記事も読める形にしています。

この物語は前の話から続いています。初めて読む方は、第1話「合格点」からお読みください。

この作品はフィクションです。

管理人マキ

はじめまして、管理人のマキです。

女装歴20年の経験も踏まえながら、身バレの不安に配慮した情報を初心者向けに分かりやすく整理しています。


本編

サイズを間違えたスカートは、翌日のうちに返品の手続きをした。

袋へ戻して梱包し、伝票を貼り、コンビニから発送する。

作業自体は、事務的にこなせた。仕事で書類を確認するときと似たような感覚だった。

失敗した物を、決められた手順で元に戻す。

それができたことに、小さな安心があった。

その数日後、スマートフォンに通知が届いた。

最初に買ったニットの返品期限まで、あと二日だった。

俺は通知を開き、日付を確認した。

返品するつもりはなかった。

だからといって、その場でタグを切る気にもなれなかった。

通知を閉じ、いつも通り仕事へ行った。

翌日の夜、引き出しからニットを取り出した。

畳まれたままの服を膝の上へ置き、首元から下がっている下げ札に触れる。

これが付いている限り、まだ買う前の状態へ戻せるような気がしていた。

返品するつもりはない。

明日になれば、期限も過ぎる。

それでも、自分の手で切ることには、別の意味があるように思えた。

しばらく下げ札を指で挟んでいたが、やがて机からはさみを持ってきた。

留めていた細い糸へ刃を当てる。

思っていたより、あっさりと切れた。

強い高揚も、後悔もなかった。

切り離した札を手に持ったまま、もう戻すつもりはないのだと、静かに思った。

同じ週に、注文し直したスカートも届いた。

袋から取り出し、カーテンと玄関の鍵を確認してから試着する。

今度は腰を通り、脇のファスナーも最後まで上がった。

丈の位置も、鏡で見る限りおかしくない。

ニットと合わせて全身を見る。

前回よりも、ずっとまとまって見えた。

それを認めると、急に落ち着かない気分になった。

しばらく鏡の前に立っていたが、今日はそれ以上長く見続けず、服を脱いだ。

その夜、ニットを洗濯するかどうかで迷った。

着た時間は短い。

まだ洗わなくてもいいのではないかと思った。

けれど、下げ札はもう切っている。

これからも着るつもりなら、普段の服と同じように手入れをすればいい。

洗濯表示を確認する。

ネットを使用するように書かれていたため、洗濯機の横に置いてあったネットへ入れた。

洗濯機が回っている間、特別なことをしているような気はしなかった。

ただ、自分の服を洗っている。

そう考えると、それ以上の理由は必要なかった。

乾いたニットを、いつもの手順で畳んだ。

袖を内側へ折り、形を整え、半分に重ねる。

スカートも畳み、普段着を入れている引き出しの一角へ並べた。

特別な場所を用意したわけではない。

いつもの服の隣に、二着分の場所を空けただけだった。

引き出しを閉める。

もうこれは、試しに買った物ではない。

自分が持っている服の一つになっていた。

そのことに驚きはなかった。

ただ、少し前の自分なら、この引き出しの中を想像することはできなかっただろうと思った。

さいごに

返品するつもりがなくても、タグを切ったり、初めて洗濯したりするときには、少し迷いを感じることがあります。

和也はニットのタグを切り、洗濯して畳み、注文し直したスカートと一緒に普段着の隣へしまいました。

女装用品が増えてきたときは、服やウィッグ、メイク道具ごとに戻す場所を決めておくと、片付け忘れを減らしやすくなります。

作中に出てきた服や女装用品のしまい方については、こちらの記事で詳しくまとめています。

女装用品の収納方法|服・ウィッグ・コスメを見つかりにくく整理するコツ

この小説を続けて読む

前の話 第5話「もう一着」

次の話 第7話「首から上」

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