【女装小説】くすんだ青い金曜日|第12話「しまっておく」

女装小説

この小説について

『くすんだ青の金曜日』は、女性物の服に惹かれた32歳の会社員・中野和也が、誰にも知られない部屋で少しずつ女装を始めていく全13話の小説です。

小説を気軽な入口にしながら、作中に登場する悩みに関連したガイド記事も読める形にしています。

この物語は前の話から続いています。初めて読む方は、第1話「合格点」からお読みください。

この作品はフィクションです。

管理人マキ

はじめまして、管理人のマキです。

女装歴20年の経験も踏まえながら、身バレの不安に配慮した情報を初心者向けに分かりやすく整理しています。


本編

日曜が近づいても、以前ほど落ち着かない気持ちにはならなかった。

来訪の前日、部屋を見渡す。

汚れている場所も、散らかっている場所もない。いつも通りの状態だった。

以前なら、ここからタオルを畳み直し、棚の奥まで拭いていたはずだった。

洗面所へ行き、タオルの端を見る。

少しだけ傾いていたが、そのままにした。

棚も開けなかった。

代わりに、クローゼットの前へ座った。

手前の鞄と季節外れの服を動かし、奥に置いた収納ケースを確認する。

外から中身は見えない。

蓋もきちんと閉まっていた。

それでも一度取り出し、蓋を開けた。

ニット、スカート、ウィッグ、メイク道具が、それぞれ決めた場所に収まっている。

ニットの袖だけが、少し折れ曲がっていた。

手に取り、袖を内側へ戻す。

半分に折り、ほかの服と揃えてケースへ入れた。

明日、母がクローゼットを開けないとは限らない。

見つからない場所へしまっておく必要は、今も変わっていなかった。

ただ、以前のように、急いで痕跡を消している感じはしなかった。

今日は着ない。

だから、元の場所へ戻しておく。

それだけだった。

蓋を閉め、ケースを奥へ戻す。

手前に鞄と服を置き直し、クローゼットの扉を閉めた。

もう一度開けて確認することはしなかった。

翌日、母はいつもと変わらない様子でやってきた。

玄関で靴を脱ぎながら、部屋の中を見る。

「今日も片付いてるじゃない」

「まあね」

母を部屋へ通す。

母はタオル掛けのタオルの端を直し、冷蔵庫を開けた。

「和也、野菜足りてないんじゃない?」

「今度買うよ」

「またそう言って」

母は持ってきた菓子の箱をテーブルへ置いた。

お茶を淹れていると、母が思い出したように聞いた。

「まだ彼女とかいないの?」

「忙しいだけだよ」

いつもの答えだった。

母も、それ以上は聞かなかった。

一時間ほど、仕事や実家の近所の話をした。

帰る支度を始めた母が、部屋をぐるりと見渡す。

「部屋、きれいねえ。ちゃんとやってるじゃない」

前にも聞いた言葉だった。

「まあね」

そう答えた。

褒められれば、やはり嬉しかった。

けれど、その言葉を待っていたわけではなかったのだと、返事をしてから気づいた。

母を玄関まで見送り、鍵を閉める。

流しに残った湯飲みを洗い、いつもの場所へ伏せて置いた。

テーブルを拭き、ずれていた座布団を戻す。

部屋の中は、母が来る前とほとんど変わっていなかった。

クローゼットの扉も閉じたままだった。

俺はその前を通り過ぎ、ソファへ座った。

さいごに

第12話では、母が来る前に、和也が女装用品を決めた場所へ戻していく様子を描きました。

見つからない場所へしまうことは必要ですが、使ったあとに戻す場所を決めておくと、片付け忘れも減らしやすくなります。

作中に出てきた服・ウィッグ・コスメの収納方法については、こちらの記事で詳しくまとめています。

女装用品の収納方法|服・ウィッグ・コスメを見つかりにくく整理するコツ

この小説を続けて読む

前の話 第11話「空いた時間」

次の話 第13話「次の金曜日」

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