【女装小説】くすんだ青い金曜日|第7話「首から上」

女装小説

この小説について

『くすんだ青の金曜日』は、女性物の服に惹かれた32歳の会社員・中野和也が、誰にも知られない部屋で少しずつ女装を始めていく全13話の小説です。

小説を気軽な入口にしながら、作中に登場する悩みに関連したガイド記事も読める形にしています。

この物語は前の話から続いています。初めて読む方は、第1話「合格点」からお読みください。

この作品はフィクションです。

管理人マキ

はじめまして、管理人のマキです。

女装歴20年の経験も踏まえながら、身バレの不安に配慮した情報を初心者向けに分かりやすく整理しています。


本編

ニットとスカートを合わせて鏡の前に立つたび、少しずつ慣れていった。

着る手順にも、鏡を見る角度にも、迷いが減っている。

ただ、ある夜、いつものように全身を確認していて、初めてはっきりと気づいたことがあった。

服はもう、それなりに馴染んで見える。

なのに、首から上だけが、いつもの自分のままだった。

短く整えた髪。髭を剃ったあとも、顎から口元に残っている青み。

そこだけが、服の印象から切り離されていた。

その夜は、それ以上考えなかった。

けれど次の週末、気づけばウィッグを検索していた。

今回は慎重に選ぼうと決めていた。

スカートのサイズで失敗した記憶が、まだ新しかった。

何日かかけて、いくつもの商品ページを見比べた。

色は明るすぎないもの。

長さは、自然に見えそうなミディアム丈。

価格は、最初なので極端に高くも安くもないもの。

レビューにも一通り目を通し、星の数だけでなく、購入した人が載せている写真も確認した。

一週間ほど検討して、これなら大丈夫だろうと思えるものを一つ選んだ。

注文を確定するとき、スカートを買ったときのような戸惑いはなかった。

今度は十分に調べた。

そんな手応えがあった。

届いたのは数日後だった。

箱から取り出し、付属していたネットを外す。

鏡の前で、説明の写真を見ながら被ってみた。

想像していたものと、どこか違った。

色も長さも、商品ページで見た通りのはずだった。

それなのに、鏡に映る自分は思っていたより不自然だった。

何度か角度を変えて確認して、ようやく違和感のある場所が見えてきた。

分け目が妙に平らで、頭の上に髪を載せただけのように見える。

前髪の位置も合っていない。

生え際の部分も、近くで見るとはっきり分かった。

――色とか長さばかり見てたな。

検索履歴を振り返りながら気づいた。

自分が比較していたのは、色、長さ、価格、レビューだった。

つむじがどう作られているか。

前髪を調整できるか。

生え際がどのように見えるか。

そうした部分は、ほとんど確認していなかった。

慎重に選んだつもりだった。

けれど、見るべき場所そのものが違っていたらしい。

改めて調べてみると、ウィッグを自然に見せるには、つむじや前髪、生え際も確認した方がよいことが分かった。

前髪の位置を少しずらし、分け目を指で整えてみる。

最初よりはましになった。

ただ、根本的な違和感は消えなかった。

――髪だけ変えても、顔がそのままだと、結局ちぐはぐなんだな。

その夜は、それ以上手を加えなかった。

ウィッグを外し、絡まないように軽く整えてから、付属していたネットへ戻した。箱へ入れ、クローゼットの中へしまう。

それから数日は、何も試さなかった。

仕事から帰り、食事をして、風呂に入り、いつも通りに過ごした。

ただ、鏡の中で髪と顔がちぐはぐに見えたことは、何度か思い出した。

数日後、仕事帰りにドラッグストアへ寄った。

ファンデーションが並ぶ棚の前で、一度通り過ぎた。

別の売り場を一周してから戻り、手に取りやすい価格のものを一本選んだ。

色の違いはよく分からなかった。テスターを顔に使う気にはなれず、パッケージに「標準色」と書かれているものを選んだ。

会計を済ませ、他の日用品と一緒に袋へ入れて持ち帰った。

その夜、鏡の前で説明を確認しながら、ファンデーションを薄く塗ってみた。

肌の色は、少し均一になったように見えた。

けれど、顎から口の周りにかけて、青みがはっきり残っている。

何度か重ねてみたが、隠れることはなかった。

むしろ、その部分だけ厚くなり、周囲の肌から浮いて見えた。

――これは、ファンデーションだけじゃどうにもならないやつだ。

服のときとも、ウィッグのときとも違う壁だった。

少しうんざりした。

一つ直そうとするたび、別の問題が見つかる。

それでも、すべてが無理だとは思わなかった。

スマートフォンで、青髭を目立たなくする方法を調べた。

青みを隠そうとして肌色を重ねるだけではなく、反対の色を先に使って目立ちにくくする方法があるらしい。

オレンジ系の色を薄く使い、その上からファンデーションを重ねる。

そんなやり方があることすら、知らなかった。

その夜は、それ以上何も買わなかった。

鏡の前を片付け、ファンデーションを箱へ戻す。

できなかったことが、また一つ増えた。

同時に、次に試せることも一つ増えていた。

さいごに

ウィッグやファンデーションを用意しても、実際に使ってみると、選ぶ前には気づかなかった違和感が見えてくることがあります。

和也は色や長さを慎重に選んだつもりでしたが、つむじや前髪、生え際まで確認できていませんでした。また、青髭はファンデーションを重ねるだけでは隠れず、色補正という方法があることを知りました。

作中に出てきた、自然に見えやすいウィッグの選び方については、こちらの記事で詳しくまとめています。

自然に見えるウィッグの選び方|女装初心者が失敗しにくいポイント

青髭の剃り方や色補正、ファンデーションでのカバー方法については、こちらの記事で詳しくまとめています。

青髭が隠れない人へ|女装メイクの色選び・剃り方・隠し方・カバー方法を解説

この小説を続けて読む

前の話 第6話「タグを切る日」

次の話 第8話「鏡の中の全部」

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