【女装小説】くすんだ青い金曜日|第4話「浮いて見える服」

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この小説について

『くすんだ青の金曜日』は、女性物の服に惹かれた32歳の会社員・中野和也が、誰にも知られない部屋で少しずつ女装を始めていく全13話の小説です。

小説を気軽な入口にしながら、作中に登場する悩みに関連したガイド記事も読める形にしています。

この物語は前の話から続いています。初めて読む方は、第1話「合格点」からお読みください。

この作品はフィクションです。

管理人マキ

はじめまして、管理人のマキです。

女装歴20年の経験も踏まえながら、身バレの不安に配慮した情報を初心者向けに分かりやすく整理しています。


本編

荷物が届いたのは、火曜日だった。宅配ボックスから受け取って、そのまま部屋に置いた。すぐには開けなかった。

開けたのは、金曜の夜だった。翌日は特に予定がない。誰かに会う約束もなければ、朝早く出かける用事もない。そういう夜を選んだつもりはなかったが、気づけばそうなっていた。

段ボールを開けると、薄い紙に包まれたニットが出てきた。畳まれたまま、色と手触りを確かめる。写真で見たより少し落ち着いた青だった。生地は思っていた通り柔らかい。

しばらくそのまま眺めていたが、やがてカーテンが閉まっているか確認した。玄関の鍵もかけた。誰も来ないと分かっていたが、確かめないと次に進めなかった。

鏡の前に立って、まず体に当ててみた。

それから、着てみた。

袖を通す感触は、いつもの自分の服とは違った。肩のあたりが少し窮屈にも感じたし、首元の開き方も見慣れない。裾の落ち方も、普段のニットとは違う。

鏡に映る自分を見る。

生地の色は、思っていた通り好きだった。柔らかさも、想像していた以上だった。

それなのに、鏡の中では服だけが浮いて見えた。

自分の部屋の、自分がいつも座っているソファの前に、見慣れない色の布地だけが立っている。似合っているとは、とても思えなかった。

それでも、脱ぎたいとは思わなかった。

しばらくそのまま立っていた。着心地が悪いわけではない。むしろ、生地が肌に触れる感覚は、悪くないどころか、もう少し確かめていたいと思った。

似合わないと分かっているのに、脱ぐ理由が見つからない。

そんな感覚は初めてだった。

数分、そのまま鏡の前にいた。体の向きを少しずつ変えながら、もう一度だけ自分を見てから、ようやく脱いだ。

畳み方は、いつも自分の服を畳むときと同じだった。袖を内側に折り、半分に折って、また半分にする。特別な扱いをしたわけではない。

タグは切らなかった。

切ってしまえば、もう返品できる状態ではなくなる。そのままにしておけば、まだ元に戻せるような気がした。

洗濯もしなかった。数分しか着ていないのだから、まだ必要はない。そう考えて、洗濯表示を確認するだけで終えた。

洗濯機に入れることが、この服を使い始めることのように感じられた。

畳んだニットを、クローゼットの中、普段着のTシャツの下に入れた。一番奥ではなく、上の一枚をどければ見える位置だった。

翌朝、クローゼットを開けたとき、視線が一瞬、その位置をなぞった。

取り出しはしなかった。ただ見て、すぐに扉を閉めた。

そんな自分の動きに、少し遅れて気づいた。

それから数日後の夜、スマートフォンで翌週の予定を確認していた。金曜の欄には何も入っていない。

――金曜なら、翌朝も早くない。

そう思った瞬間、自分の考えに引っかかった。

何のために、金曜日を空けようとしているんだろう。

その問いに、すぐには答えが出なかった。

さいごに

初めて女性物の服を着たとき、好きで選んだ服でも、鏡の中では服だけが浮いて見えることがあります。

和也も、ニットの色や着心地は気に入っていましたが、自分に似合っているとは思えませんでした。それでも、すぐに脱ぎたいとは感じず、鏡の前でもう少し確かめようとしました。

最初から思い描いた姿にならなくても、服の形や色、合わせ方を少しずつ試すことで、自分に合うものが見つかる場合があります。

初めての一着で、どんな形や色を選べばいいか、体型との合わせ方に迷う場合は、女装初心者が最初の一着を選ぶときのポイントで詳しく整理しています。

この小説を続けて読む

前の話 第3話「欲しくなくならなかった」

次の話 第5話「もう一着」

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